土砂災害の対策にはどんなものがあるの?

地震や火山噴火が起こりやすく、さらには雨も多い日本列島。

日本で安全なところは一つもないと言っても過言ではないほど、いつどこにいても土砂災害の危険と隣り合わせです。

2016年の熊本地震で被災した熊本城

2016年の熊本地震で被災した熊本城

 

以前、土砂災害とはどんなもので、どんな種類があるのかについて解説しましたね。

今回は、それらの土砂災害に対してどのような対策がなされているのかご紹介します!

土砂災害の対策にはハード対策とソフト対策がある

みなさんは土砂災害の対策と言われて何を思い浮かべますか?

砂防ダムやハザードマップなどが有名なところでしょうか。

 

実は土砂災害の対策というのは大きく2つに分けることができます。

 

1つ目はハード対策と呼ばれるもので、大きな構造物を設置することがこれにあたります。

大きな構造物

ゲームにたとえるなら、厚いよろいを装備して守備力を上げることによってダメージを軽減する感じです。

大量の資材が必要でお金もかかりますし、工事には時間もかかります。しかし、そのぶん効果は大きく、被害軽減に重要な役割を持っています。

 

2つ目はソフト対策と呼ばれるもので、ハザードマップや避難情報など、構造物を用いない対策がこれにあたります。

構造物を用いない対策

ゲームにたとえるなら、すばやさを高めて攻撃をかわす、もしくは強敵のひそむ危険な場所には行かない、というイメージです。

ハード対策で何もかも防ぐことには限界があるので、ソフト対策によって人命や財産が危険にさらされることを回避する必要があります。

 

ハード対策

構造物による土砂災害の対策です。

日本でも特に被害の多い、がけ崩れ・地すべり・土石流の対策をそれぞれ見ていきましょう。

 

がけ崩れの対策

法枠工(のりわくこう)擁壁工(ようへきこう)などによって、斜面を崩れにくくしたり、斜面から崩れてきた土砂を受け止めたりします。

 

法枠工(のりわくこう)

法枠工の工事例

 画像引用:神奈川県藤沢土木事務所 急傾斜崩壊対策工事

https://www.shouei-kogyo.com/record/624.html

斜面をコンクリートの枠でおさえこみ、崩れにくくする工事です。

枠の間に植物を植えることもあり、雨水が直接当たって斜面が削れることを防ぎます。

 

擁壁工(ようへきこう)

擁壁工の工事の例

画像引用:落石対策工 株式会社共生

https://www.kyosei-kk.co.jp/case/rakuseki.html

コンクリートの壁や柵によって、斜面から崩れる土砂を食い止めます。

落石対策としても用いられます。

 

地すべりの対策

地すべりの対策は、水対策土砂対策の2つに分けることができます。

 

水が地下にたまらないようにする

土砂災害って何?がけ崩れ・地すべり・土石流の違いは?でもお伝えしたように、地すべりは地下水がたまることによって発生します。

そこで、水がたまらないようになる工事をしよう!というわけです。

集水井工の工事の様子

画像引用:集水井工:関東森林管理局

https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/policy/business/santi-saigai/kousyu/syusui.html

このように集水井工(しゅうすいせいこう)と呼ばれる大きな井戸を掘って、水を危険な場所から取り除きます。

この他にも、そもそも地下に雨水がしみこまないように地面で集めてしまうという方法もあります。

 

土砂の動きをおさえ込む

下の図のように、地すべりが起こる層と動きにくい層をつらぬいて大きな杭(くい)を何本も打ち込み、土砂がすべらないようにします。

これを杭工(くいこう)と言います。

杭工の様子

他に、セメントを使って地面を抑え込んだり、地すべりの起こる部分の上側の土砂を取り除いたりするなど、さまざまな対策があります。

 

土石流の対策

砂防堰堤(さぼうえんてい)を設置して、土砂や流木をせき止めます。砂防ダムとも呼ばれます。

下の画像は、ある山の登山口近くで撮影したものです。

高いコンクリートの壁が見えますね。これが砂防堰堤です。

砂防堰堤の工事中の様子

この川の流域では土石流による被害がひんぱんに起きていましたが、大規模な工事によって被害の軽減が図られました。

上の写真のように全体が壁のようになっている砂防堰堤は不透過型(ふとうかがた)と呼ばれます。

 

一方、鋼鉄を使って土砂や流木を食い止める透過型(とうかがた)の砂防堰堤もあります。

透過型砂防堰堤

 

すき間があることで、ふだんは小さい土砂を下流に流すことができます。

大雨によって大きな岩や流木が流れてくると、上の画像の鋼鉄の部分でせき止められ、そこに土砂がたまる仕組みです。

流木は軽いので、不透過型の堰堤では水と一緒に堰堤を乗り越えてしまうことがよくありますが、透過型の堰堤だと効果的に流木をせき止めることができます。

最近では透過型砂防堰堤の設置が増えています。

 

ソフト対策

構造物を使わない土砂災害の対策です。

ソフト対策は土砂災害の発生するところから人命や財産を退避させることが目的なので、土砂災害の種類は違っても似たような対策が行われます。

みなさんも知っておくことで役立つ知識がありますよ。

 

開発制限や移転勧告

土砂災害特別警戒区域と呼ばれる、土砂災害の危険性が非常に高い区域では、開発行為の制限や居住者への移転勧告・支援などが行われます。

下の図だと、赤いエリアが特別警戒区域です。

土砂災害特別警戒区域

画像引用:石川県/2.土砂災害警戒区域及び指定地等の管理

https://www.pref.ishikawa.lg.jp/sabou/2dosya-jittai/index.html

このエリアで新しく土地を利用する際には、土砂災害防止のためのハード対策を行ったうえで、都道府県知事の許可を得ることが必要です。

また、すでに居住している住民には、特別警戒区域の外への移転が勧告されたり、移転に必要な資金の融資が行われたりします。

 

ハザードマップ

災害が起きた時、どの程度の被害が予想されるか?というのを地図上に表したものをハザードマップと言います。

各都道府県・市町村のホームページに公表されているので、ぜひ一度ご覧になってくださいね。

ハザードマップ

 

避難情報

大雨などで災害の危険度が高まると、各市町村から避難情報が発令されます。

避難情報を危険レベルの低い順に並べると以下のようになります。

  1. 避難準備情報(高齢者等避難開始)
  2. 避難勧告
  3. 避難指示

また、実際に災害が発生した場合には災害発生情報が発令されます。

 

みなさんもできる対策

土砂災害の危険性が高い場所は、事前にハザードマップによって確認することができます。

みなさんがお住まいの地域では、どのような災害の危険性が高いかご存じですか?

下のリンクは国土交通省のハザードマップポータルサイトで、各市町村のハザードマップを検索できるほか、さまざまな災害の危険性を地図上で確認できます。

ぜひ一度ご覧ください!

 

避難が必要な場所にお住まいの場合、もし大雨などによって避難情報が発令された時には、状況に応じて速やかな避難をしましょう。

避難

避難と聞くと避難所に行くイメージを持っている方も多いかもしれません。

しかし、もし避難が難しい場合は、家の中で安全性の高い場所(2階や斜面から離れた部屋など)に移動することも有効です。

命を守るため、最善の行動をとるようにしてくださいね。