地震や台風などによる災害で、地球が持つエネルギーのすさまじさを感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、地球で起こっているダイナミックな現象は、必ずしも地球のみによって成立しているわけではありません。
宇宙の天体、特に太陽と月の影響を強く受けて、地球は今の姿になっています。
今回は、太陽と月の影響を受けて起こっている現象の1つである、潮の満ち引きについてわかりやすく解説します!
潮の満ち引きとは、海面が上がったり下がったりする現象のこと
地球の表面は海水によっておおわれています。
実際には地球はきれいな球体ではなく、その表面はデコボコにゆがんでいます。
そのため海水におおわれていない陸地の部分があって、そこに私たちは住んでいますよね。
さて、海面の高さは時間によって変化します。
太陽と月の重力の影響によって周期的に上がったり下がったりするほか、台風や低気圧などによって不規則に変化することもあります。
このように海面が上がったり下がったりすることを「潮の満ち引き」または「潮汐(ちょうせき)」と言います。
では、なぜ海面が上がったり下がったりするのでしょうか?
潮の満ち引きは、おもに太陽と月の影響で起こる
空に浮かんでいるように見える太陽と月。
地球と太陽はおよそ1億5000万km、地球と月はおよそ38万km離れています。
地球の海面が上がったり下がったりするのは、これらの遠く離れた天体の影響を受けているからです。
満潮(まんちょう)・干潮(かんちょう)は、月の影響によって1日2回ぐらい起こる
月の影響で海面が高くなる「満潮」を簡単な図で説明します。
月に近い側の海と、その反対側の海は、海面が高くなり満潮となります。
一方、そこから約90度ずれた場所では、海面が低くなり「干潮」となります。
地球は1日に約1回自転しているので、満潮・干潮は1日におよそ2回ずつ起こります。
ただし、たまに1日に1回しか起こらないこともあります。
月は地球の周りを回っているので、毎日およそ50分ずつ月が真南に来る時間が遅れていくためです。
満潮・干潮が起こる理由
では、なぜ満潮・干潮は起こるのでしょうか?
月に近い海面では、月の引力の影響をより強く受けることで、海水が引き寄せられます。
これによって海面が上昇しているわけです。
一方、月の反対側では月の引力が弱くなります。
しかし、弱くても月の引力がはたらいていることは確かです。
では、なぜ月の反対側でも海面が上昇するのでしょうか?
この理由をわかっていただくために、2点ご説明します。
1つ目の説明は、地球の方が月の反対側の海よりも月に強く引きつけられているということです。
「月の正面の海」「地球の重心(下図の赤い点)」「月の反対側の海」を比べると、
月の引力の影響は
「月の正面の海」>「地球の重心」>「月の反対側の海」となります。
よって、月の反対側の海水は地球から取り残され、その結果として海面が高くなるというわけです。
2つ目の説明は、地球と月が互いに回転しており、地球全体がその遠心力の影響を受けているということです。
少し話が変わりますが、ハンマー投げを例にして簡単にご説明します。
ハンマーを振り回すことで、ハンマーでは遠心力が発生します。
しかし遠心力が発生するのはハンマーだけではありません。
ハンマーより重い人間においても遠心力は発生します。
これは地球と月においても言えることです。
月とくらべてかなり重い地球でも、月に少し振り回されるように遠心力が発生しています。
(地球の自転による遠心力ではないことに注意してください)
この遠心力は、地球のどこでも同じ強さ・方向で発生しています。
よって海水は月の反対側に集まろうとする、というわけです。
では、以上2つの説明をまとめてみましょう。
とりあえず太陽のことは無視して、月の影響だけをまとめると以下の図のようになります。
1つ目で説明した月の引力(紫色)と、2つ目で説明した遠心力(緑色)を合わせたものは潮汐力(ちょうせきりょく)(赤色)と呼ばれています。
月に近い場所(図の左側)では、遠心力よりも月の引力の影響の方が大きく、海水が集まることによって海面が上昇し満潮になります。
月から遠い場所(図の右側)では、月の引力よりも遠心力の影響の方が大きく、海水が集まることによって海面が上昇し満潮になります。
その間の場所では、海水が他の場所へと流れていくことで減少するため、干潮になります。
地球中心部では遠心力と月の引力とがほぼつり合っているため、地球と月の距離はほぼ一定に保たれています。
(実際には1年で約3.8cmずつ離れているのですが…)
※「潮の満ち引きには2つ目で説明した遠心力は関係が無く、1つ目で説明した月の重力の強弱だけで成立している」とする説もあります。
実際の満潮・干潮の時刻には、ずれがある
実際の満潮・干潮は、天文学的に計算される時刻とずれが生じます。
月が南にあるから満潮!というわけではありません。
例として2020年11月13日~19日の京都で月がもっとも近づく(南中する)時刻と、それに対応する満潮の時刻を見比べてみましょう。
この記事が書かれた頃だと、満潮時刻が月の南中よりも3時間ほど遅くなっていることがわかりますね。
時期によってはもっとずれが大きい場合もあります。
これには、地形・海流・気圧などの様々な要因が複雑にからんでいると考えられています。
大潮(おおしお)・小潮(こしお)は、太陽・月の影響によって1ヶ月に2回ぐらい起こる
次は、太陽がからんでくる大潮・小潮について見ていきましょう。
地球・月・太陽がほぼ一直線状に並ぶ満月・新月の時には、満潮と干潮の差が大きくなる「大潮(おおしお)」となります。
一方、月がそこから90度ずれる上弦の月・下弦の月の頃には、満潮と干潮の差が小さくなる「小潮(こしお)」となります。
上の図と下の図で、海水の形を見比べてみてください。
これだけだと少しわかりにくいので、潮位の変化をグラフにまとめたものをご紹介します。
引用:気象庁 | 潮汐・海面水位のデータ 潮位表 東京(TOKYO)
毎日ギザギザの形になっているのは、先ほど説明した満潮と干潮を繰り返しているからです。
グラフの4月10日・4月25日・5月9日のあたりで、潮位の変化が激しくなっているのがわかると思います。これが大潮です。
一方、4月16日・5月1日のあたりでは、潮位の変化が穏やかになっています。こちらが小潮です。
月はおよそ1ヶ月に1回地球の周りを回ります。その間に月の形は新月→上弦の月→満月→下弦の月となって再び新月に戻り、大潮・小潮は月に約2回ずつ起こります。
大潮・小潮が起こる理由
先ほど月と地球の関係で成り立っていると説明した潮汐力が、太陽と地球の間でも成立しているためです。
太陽によって発生する潮汐力は、「太陽の引力」や「太陽の影響で地球に発生する遠心力」の影響を受けていると考えられています。
大潮となる満月や新月の時には、月による潮汐力で満潮になっている海面が、太陽による潮汐力でさらに上昇します。
これによって満潮と干潮の高低差は激しくなります。
小潮となる上弦の月や下弦の月の時には、月の潮汐力によって満潮になっている側の海面が、太陽による潮汐力で抑えられるかたちになります。
これによって満潮と干潮の高低差は穏やかになります。
ちなみに、太陽による潮汐力は月の46%ほどしかありません。
太陽は月よりも非常に重いのですが、地球との距離が非常に長いために、月よりも潮汐に与える影響が小さくなっています。
満潮・大潮・高潮の違い
満潮(まんちょう)とは、月の影響で海面が上がりきった状態です。干潮(かんちょう)はその逆で海面が下がりきった状態です。1日におよそ2回ずつ起こります。
大潮(おおしお)とは、月・地球・太陽がほぼ一直線上になり、干満の差が激しくなる時期のことです。小潮(こしお)はその逆で、地球から見て月と太陽が約90度の位置にあり、干満の差が緩やかになる時期です。1ヶ月におよそ2回ずつ起こります。
高潮(たかしお)とは、低気圧や台風が通過することで潮位が大きく上昇することを指します。気圧が低いことで海水が上へ吸い上げられたり、強い風によって海水が海岸に押し寄せたりすることで発生します。満潮や大潮と違い、周期的なものではありません。
参考文献